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「うぅ・・・ん・・・」
目を覚ました時、私は見知らぬ場所にいた。

白いベッドの上。
目の前には白い壁。
そして窓から見えるのは見慣れぬ景色。

保健室・・・?でも何か違う様な・・・
何処だろう、此処は・・・もしかして病院?

そうだ、確かあの時私はホームから落ちたんだった。
その後の事は覚えていない。
もしかして、気絶でもしていたのだろうか・・・
でもそれ位なら多分わざわざこんな所までは連れて来られないはず・・・

(まさか何処か怪我でも・・・?)
そう思った私はそっと自分の頭へ手をやってみた。

「うっ・・・」
また頭痛がした。さっきと殆ど同じ様な痛み。

その時、私はすぐそこのドアが半開きになっている事に気が付いた。
気になったので、そっとベッドを降り外を見てみると、そこには・・・

「あれ・・・恵一、亜紀も・・・」


「で、その頭の怪我は大丈夫なのか?」
「うん、多分・・・だって落ちた時から何も覚えてないし・・・」
「・・・そんな所まで覚えてねえの?」
「仕方無いじゃん、覚えてないものは覚えてないんだって・・・」
「七海・・・今日本当に大丈夫?」
「判らない・・・」

そこで会話は途切れてしまった。
続く妙な沈黙。

それを破ったのは、恵一だった。

「七海、お前・・・今日何から何までおかしい」

その言葉に、私は一瞬何かと思った。
亜紀も少し驚いた様に恵一を見ている。
その時の彼は何だか少し怒っている様にも見えた。

「そんな事言ったって・・・今日は体調悪い訳だし・・・」
私が言い返す前に亜紀がそっと抗弁した。

「そういう意味で言ってるんじゃねえよ。」
しかし恵一は態度を崩す様子も無い。

「・・・?」
「どういう事・・・?」
私も亜紀も最早訳が判らなくなっていた。
そして、恵一は続ける。

「何でかは判らないが・・・今日のお前はお前らしくないって思ってた。
だって今日ずっと様子が変だったじゃないか!
目は虚ろだったし、実際早退したと思ったらこの有様だ。
後、朝話してた時も思ったんだ。話し方も何だか違った。
いつものお前よりも弱気だった気がした。
確かに今日は体調が悪そうだったからそのせいもあるかもしれない。
でも、逆の様な・・・『何かあったから』そうなった気がして仕方無いんだ。
それに・・・俺、見たんだ・・・今朝の駅で、お前を・・・
寝てたんじゃなかった。あの時からおかしかった。
まるで取り憑かれたみたいにホームの端の方へ歩いて行ったんだ。
覚えてないのかよ?自分で取った行動なんだぜ?
それとも、まさか・・・お前七海じゃないのか?
本当に憑かれてるんじゃないか?
こんな非現実的な事言うつもりは無かったけどさ・・・
それ位の事も疑いたくなったんだ。
とにかく・・・俺は早くいつもの七海に戻って欲しいだけなんだ・・・」

「恵一・・・」

「あぁもう、自分で何言ってるんだか判んねぇ!」
最後にそう言って、恵一は病室から駆け出した。

「ちょっと、恵一!待ってよ!何が言いたいの!?」
私の声はもう彼には届かなかった。

「ごめんね。私、恵一の事が心配だからもう帰るね・・・」
そして亜紀も病室から去っていった。

「一体どういう事なんだろう...」

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