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バスの中にいた時間が異様に長く感じられた。
相変わらず頭はぼんやりとしているが、何故か眠れなかった。
誰とも話さないでいると、時間ってこんなに長く感じるものなのだろうか・・・
流れる景色もこんなにちゃんと見たのは初めてかもしれない。
何しろ、他にする事が無い。

やがてバスはいつもの駅前に着き、私はやや重い足取りで駅のホームへと向かって行った。
そう言えば、さっきと比べて体もだるくなってきた気がする。
ホームに辿り着くと、私はすぐに近くの椅子に腰を下ろしてしまった。


それから暫く・・・どれ位経っただろうか・・・

その時私は何だか違和感を感じた。
(いくら待っても電車が来ない・・・)

そう、さっきから何分も経っているはずなのに、一向に電車が来る気配も無いのだ。

休んでいたからか少し元気が出てきたので、暇潰しにでも辺りを歩き回ってみる事にした。

やがていつも電車を待つ場所とは反対側にある所の一角で足を止めた。
普段はあまり足を運ばない所・・・そもそも軽く死角になっている場所だ。

(何でこんな所で止まったんだろう、私・・・)
特に何かがある訳でもないのだが・・・


「あら、貴方もお参りに来たの?」


突然背後から声がして、思わず私は少し驚いてしまった。
振り向くとそこには私よりいくつか年上と思われる物腰の柔らかそうな女性がいた。
彼女の両腕には花束が抱えられていた。
大して大きくは無いが、丁寧に束ねられている。
きっと、何らかの思い入れがあったのだろう。

「え・・・此処で何があったんですか?」
誤魔化すのも悪いと思い、私は素直に答えた。

「丁度4年前の話。此処で人身事故があったの」

「人身事故・・・」
その時、私は今朝の会話が頭に浮かんだ。

「女の子がこのホームから飛び降りたのよ。
今日が命日だから、花を持ってきたんだけど・・・」


そうだ・・・亜紀が言ってたのはきっとこの事だ。
たまたま4年前と言う所を聞き逃したから・・・
道理で今朝は電車に異変も何も無かったんだ・・・

そして私はホーム側に振り向いた。

「・・・つっ・・・」

その時、頭痛がしだした。

何で・・・?さっきまで何とも無かったのに・・・
そんな思いとは裏腹に、痛みは激しさを増していく。


此処で人身事故があった・・・

丁度4年前の今日に・・・

1人の女の子が飛び降りたんだ・・・

どんな思いを遺して逝ったのだろう・・・

何で飛び降りたのだろう・・・

電車が迫ってくる中で、1歩1歩・・・


(あれ・・・!?)

その時気が付いた。何故か1歩1歩・・・勝手に進みだしている・・・
しかも、止まらない・・・進んでいく・・・何故・・・!?
このままじゃ、ホームから・・・落ちる・・・っ・・・!

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